むし歯、歯周病の特効薬ない
毎日新聞2017年2月1日 地方版 健康 大阪府 ライフスタイル ライフ
これだけ科学が発達しいろいろな薬が開発されているのに、むし歯や歯周病をひき起こすばい菌をやっつけて、除菌する薬がなぜ無いのかと思ったことはありませんか? そんなことをしたら商売として成り立たなくなる歯科医師と製薬会社が結託してお薬の製造を阻止するようなことは決してありません。特効薬を作れない理由があるのです。
少し専門的なお話になりますが、細菌による病気(感染症)は強毒菌感染症と弱毒菌感染症の二つに分類されます。前者は法定伝染病のように、感染すると必ず発病してしまう病原性の強いばい菌がひき起こすもので、そのばい菌が普段身近にはいなくて、私たちが遭遇すると感染してしまいます。これらは大抵その病気にかかったかどうかの検査法も確立しており、治療法や効果的な抗生剤が用意されていることが多いです。
一方、弱毒菌感染症では事情が違います。これは普段私たちの身体に住みついているばい菌(常在菌)が原因で起こります。病気を起こす力が弱いのでばい菌がいるだけではなんともありませんが、一定の条件がそろった時に病気をひき起こします。口の中においては、歯垢(しこう)が出来てきた時です。しかも、普段から身体に潜伏しているので、風邪やその他の病気になった時に飲む抗生剤にほとんどさらされて慣れています。だから、抗生剤が効きにくいのです。特効薬を作らないのではなく作れないのです。
原因となるばい菌を抗生剤などで完全に死滅させることは不可能なので、結局は歯垢ができないようにお掃除することが重要になります。歯科医師が歯を磨く指導をするのは、このような理由があるからです。
ばい菌の少ない健康な口を保つためには、ブラッシングが重要なのです。(府歯科医師会学術部)
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